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百花なるオジさん

「こんな時期に来て..。150円払ったんでしょ、ならば元を取らせてあげましょ」。向島にある百花園と名のつく庭園に来たと言うのにすっかり花の見頃はおわり、名物の“萩のトンネル”もすっかり葉が茂って“緑のトンネル”となっていました。そのおじさんは突然現れ、「遠い所わざわざ来たのに何も見ないで帰すにはお嬢さん方、あまりにもかわいそうだ」とルーペと鉛筆を手に園内を案内してくれました。

【フジバカマ】
目の前にあったのは、秋の七草の一つ、藤袴です。古木を守る近衛兵のように木の根元に茂り、白い可憐な花をつけていました。しかし残念ながら生気を失いかけています。しかしこの藤袴、“老いてこそ花を咲かせる”というのか、生草のときは無臭なのに枯れた葉をこすり合わせると匂いがするというのです。本当かなと思いながら半信半疑でカラカラになった葉っぱを鼻に近づけて匂いを嗅いで見ると、確かにほのかに甘い香りがします。昔はタンスなどに入れて衣服に香りが移るようにしていたそうです。「これがクマリンだ」。あまりにも突飛にかわいらしい音がおじさんから発せられ、驚いてしまいました。酸の一種だそうですが、ついつい私が愛してやまない森見登美彦氏の近影に使われている餅のような熊“モチグマ”が思い浮かんだのでした。

【ナンバンギセル】

それはさておき、「これを見たら150円の元はすっかりとれる」と次に案内されたのが、すすきの根っこあたりにひっそりと咲くナンバキセルでした。パイプの煙管に似ていることから、“南蛮煙管”という漢字が充てられているそうで、うつむいたその姿から“思草(おもいぐさ)”なんて粋な名前もついています。葉緑素を持たず、ススキやミョウガの根に寄生して成長する寄生植物、そんな植物が存在することを初めて知りました。でもよくよく考えれば寄生虫もいれば寄生人もいる世の中で寄生植物がいるなんて当然のことといえば当然のことかもしれません。今まで出会うことがなかったことが逆に不思議なくらいです。そのナンバンギセルの歴史は古く、万葉集の中でも「道の辺の 尾花がもとの思い草 今さらになど 物か思はむ」と歌われているそうです。



緑一色だけだと思っていた庭園も名も知らないおじさんの案内で、至る所に小さな花が咲き、実を付けていることを知りました。日本のハッカ(薄荷)“ミント”と西洋ミントの違いを教えられ、野生種の梨“ヤマナシ”やアケビ、ザクロといった果樹も沢山見つけました。イスタンブールから持ち込まれたというザクロの古木にはたわわに実がつき、割れ目からは宝石のような果肉が飛び出していました。一つつまむと甘酸っぱい。秋はおいしいなぁと食欲の秋を楽しみます。食べ物といえばお茶の葉も白い花を咲かせていました。

【バショウ】

驚いたのは俳人、松尾芭蕉の俳号にもなっているバショウでした。入り口にやけに南国な植物があるなと思っていたらそれがバショウなのでした。ジャパニーズバナナとも呼ばるように、バナナのような実をつけています。この植物が芭蕉の住んでいた家の庭に植えられていたことからこの俳号がつけられたといいます。随分と南国チックな植物で、芭蕉といういかにも和風な人物の名前となかなか結びつきませんでしたが、さらに驚いたことは芭蕉が住んでいたという旧居跡「関口芭蕉庵」は文京区の関口にあって、「ずいぶん立派な家があるものだなあ」と最近よくその門の前を通り過ぎていた場所だったのでした。“灯台もと暗し”とはこのことをいうのだな、と思いました。

知らないオジさんについていってはいけないと子どもの頃はよくいわれたものですが、大人になった私は、今日は知らないオジさんについていってよかったと思いました。「そんな私は誰なんでしょうね」という気になる一言を残して、おじさんは去っていきました。
| たわいもない話 | 21:30 | comments(2) | trackbacks(0) |
コメント
すごいー!
いい出会いだねぇ^^

こういうのが旅の醍醐味?なのかなぁ

いい出会いは本当にいい思い出になるし、人生豊かになるよね。

百花園ってなんか台湾にある果物屋でもなかったっけ??
| satoko | 2011/10/21 5:31 PM |
>satokoちゃん
そうそう、ぶらり旅の醍醐味だね。
世の中にはいろんな人がいるのだよね。
果物屋だと百果園かしら??、百花園もあるのかしら。
| せどぅ | 2011/10/27 1:33 AM |
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